メダルを手に取ると周囲がまばゆい光でつつまれた。

どこからか人の声が聞こえる。


「私がアカデミーで賢者として認められ、
 卒業を迎えようとしていたあの春・・・
 あの悲しい事故が起こった・・・」

何もない空間にサツキの姿が浮かび、
そして頭の中に直接入ってくるような声が聞こえた。

「事故で命を落とした弟、ユウを生き返らせるために
 私は禁術であることを知りながら蘇生魔法を使った・・・

「その結果、ユウは息を吹き返し命を取り戻したわ。

「でもその代償に私の体は霊体化して、
 もう人間として生きられなくなってしまった。

「そんな私たちの事を知った一人の賢者・・・
 エリーザ先生は元に戻るためのチャンスを
 私たちに与えてくれた。

「それを行なうために与えられた条件は、
 私がユウを賢者にまで導くという
 容易ではないものだったけど・・・

「あの子、ユウは私の事を助けようと
 本当に必死になってくれて・・・
 ついに賢者として認めてもらえたわ。

「そして私を・・・私たちが元に戻るための魔法を
 賢者の力を得たユウが使った・・・」





「お姉ちゃん!これで元に戻れるんだよね!
 もう幽霊みたいな格好じゃなくなるんだね!」

「うん・・・ありがとう、ユウ。
 あなたは本当に凄いよ、本当に強くなったよ・・・」

「でも僕が賢者にまでなれたのは
 お姉ちゃんのおかげだもん。

「お姉ちゃんがいつもそばに居てくれたから・・・
 僕の夢が叶えられたんだよ!」

「え?ユウの夢って・・・?」





「ふふ・・・そうだね、
 私たち、
 姉弟で賢者になれたんだよね」

この不思議な空間の中を泳ぐように進みながら
二人は会話をしている。

しばらくして、
まぶたを閉じかけながらユウが言った。

「なんだか、ちょっと眠くなってきちゃった・・・
 こんな凄い魔法使ったからかなぁ・・・」

サツキはユウの体を抱きかかえて
優しく言葉をかけた。

「いいよ、このまま寝ちゃって」

しかしユウは意識を薄れさせながらも、
まだサツキに話しかける。

「帰ったら・・・お姉ちゃんがいつもくれた・・・
 あの飴・・・食べたいな・・・・・・

「すぅ・・・・・・・・・」

そのままユウは寝息を立て始めた。

「・・・ユウ・・・、
 ありがとう・・・

「うっ・・・ううっ・・・」

突然、サツキは嗚咽をこぼした。

その声は、悲しみに暮れていた。

「ごめんね・・・
 ごめんね・・・
 ごめんなさい・・・ううっ!」

サツキはユウの体を強く抱きしめながら
大粒の涙を流し、
つぶやいた。

「あなたの夢・・・
 かなえられない・・・!」


「この時に使われた魔法は時空を操って、
 以前の体に魂を移動させるというものだった。

「私たちは時間をさかのぼり、
 事故が起こる前の体に戻ることができた。

「でも、それほどの事を起こす魔法は
 相当な魔力を必要としていた。

「賢者としての魔力と、
 数年間の記憶を失ってしまうほどの・・・。

「あの子は、
 賢者としての魔力もアカデミーで学んだ事も・・・
 思い出も無くしてしまったわ。

「結果としては何もかも元に戻ったけれど、
 私の心には、やりきれない気持ちが残っていた。

「・・・だけど」





「それは私が受け持つことになったクラスの
 生徒名簿。

「なぜもう入学できるのかという疑問もあったけど・・・

「その時、私の心は
 それはどういう意味なのかと考えていたの。

「その名前が記されていたことで
 私の心は、すっと軽くなったわ。

「私は体だけでなく、心もあの子に救われた。







声が途切れると、再び周囲が光につつまれた。

目を開くと元の場所にいる。

今までの光景は夢か幻か?

手に入れたメダルを気にしながら、
その場を離れた。

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